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ミーナのクリスマス
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ミーナのクリスマス　
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先頭に

＊
　じんぶつ

*ミーナ


ダニエル


領主（りょうしゅ）


ダニエルのママ
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元もくじへ
先頭に

＊
ミーナのクリスマス　もくじ


上 　元もくじへ　先頭に
１ミーナ
２夢
３ダニエル
４ママ
５かなしい知らせ
中
６すてられた
７なきつかれた
８別の家
９星空の下
１０風車の家
１１さむい星空
下
１２よわっていく
１３ちかづくクリスマス
１４クリスマスの日
１４Bいない
１５風車の家
１６声
１７ねがいごとは？
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　ミーナのクリスマス　上
木村達也（きむらたつや）
１ 　ミーナ

　ネコのミーナは、箱（はこ）の中（なか）でミャーミャーとないていました。箱（はこ）には「このネコもらってください。」と書（か）かれていました。でも、だれももらってはくれません。みんな知（し）らない顔（かお）をしてとおりすぎていきました。
「ママ、ネコさんがすてられているよ。」こどもがきょうみをしめしました。
「だめよ、家（いえ）ではかえないわ。」 こどもは、ママにそういわれて、あきらめたようすでした。夜（よる）になると、だれも道（みち）をとおらなくなりました。ミーナはなきつかれて、箱（はこ）の中（なか）でねむりました。
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２　夢（ゆめ）

　ミーナは夢（ゆめ）を見（み）ました。それはミーナがくらしていた家（いえ）の夢（ゆめ）でした。ミーナのご主人（しゅじん）は若（わか）いダニエルでした。夕食時（ゆうしょくじ）に、ダニエルがミーナに魚（さかな）をくれました。ミーナはよろこんで、おなかいっぱいになるまで食（た）べました。そしてダニエルのひざの上（うえ）にのって、なでてもらいました。ミーナはしあわせでした。家（いえ）にはダニエルの明（あか）るい笑（わら）い声（ごえ）がひびいていました。
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３　ダニエル

　ダニエルは小（ちい）さいとき、よくちかくの粉（こな）ひき風車（ふうしゃ）のたてものに遊（あそ）びに行（い）きました。大（おお）きな風車（ふうしゃ）がまわるようすや、ガタガタとなる音（おと）がとてもおもしろかったのです。たてものの中（なか）で遊（あそ）んだり、上（うえ）にのぼってけしきをながめたりしました。生（う）まれたばかりのミーナは、そこにすてられていました。それをダニエルがひろって、ミーナと名前（なまえ）をつけて育（そだ）てました。
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４　ママ

　でも、ダニエルのママはミーナのことが好（す）きではありませんでした。いつも、ダニエルがミーナに夢中（むちゅう）になっているのを見（み）て、まゆをしかめていました。そして、あまりネズミをとらないので、やくにたたないだとか、夕食（ゆうしょく）の魚（さかな）を食（た）べてしまうとか、グチをこぼしていました。そして、ダニエルがあまり男（おとこ）の子（こ）らしくならないのは、ミーナのことばかりかまっているからだと思（おも）うようになりました。
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５　かなしい知（し）らせ

　そんなとき、若（わか）いダニエルに知（し）らせがとどきました。兵（へい）として領主（りょうしゅ）様（さま）のおともをして、遠征（えんせい）に参加（さんか）するよう召集（しょうしゅう）が来（き）たのです。まわりの人々（ひとびと）は名誉（めいよ）なことだとよろこびました。しかし、ママはかなしみました。かわいいダニエルとしばらくわかれなければならないのです。戦争（せんそう）に行（い）けば、生（い）きて帰（かえ）ってこられないかもしれません。しかし、領主様（りょうしゅさま）の命令（めいれい）にはさからえず、ダニエルは出発（しゅっぱつ）することになりました。ミーナはかなしくて一晩中（ひとばんじゅう）ミャーミャーないていました。
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〈ミーナのクリスマス中につづく↓〉





ミーナのクリスマス
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　ミーナのクリスマス　中 　
木村達也（きむらたつや）

６　すてられた

　ご主人（しゅじん）がいなくなってしまったミーナは、すてられました。ママはミーナことが好（す）きではありません。箱（はこ）の中（なか）に入れて、
「このネコもらってください。」と書（か）きました。そして、人（ひと）どおりの多（おお）い道（みち）にその箱（はこ）をおきました。ミーナはかなしくてミャーミャーとなきました。
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７　なきつかれた

　ミーナは、なきつかれて早（はや）くねたので、夜中（よなか）に目（め）がさめてしまいました。ミャーとないてみましたが、もう道（みち）にはだれもいません。ミーナは箱（はこ）から出（で）ました。そして、道（みち）をとぼとぼ歩（ある）いて行（い）きました。ダニ エルの家（いえ）に行（い）きました。大（おお）きな家（いえ）の窓（まど）は、もうまっくらになっていました。家（いえ）はひっそりとして静（しず）かでした。家（いえ）に入（はい）ろうとしましたが、ドアはしまっていました。いつも出入（でい）りに使（つか）っている穴（あな）も、もうふさがっていました。
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８　別（べつ）の家（いえ）

　ミーナはあきらめてまたとぼとぼと歩（ある）きはじめました。しばらく歩（ある）くと、窓（まど）に花（はな）がかざってある別（べつ）の家（いえ）がありました。ミーナは中（なか）をのぞいてみました。こどもと両親（りょうしん）が夕食（ゆうしょく）を食（た）べていました。そこには大（おお）きなネコがいました。そして、家（いえ）中（じゅう）に笑（わら）い声（ごえ）があふれていました。ミーナはなにも食（た）べていないのでおなかがすいてきました。家（いえ）の中（なか）からは、いいにおいがします。ミーナは家（いえ）の中（なか）に入（はい）ろうとしました。そして、窓（まど）ガラスに頭（あたま）をぶつけてしまいました。ガチャという大（おお）きな音（おと）がしました。大（おお）きなネコがとんできました。すごくおこっています。ミーナはおいかえされてしまいました。
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９　星空（ほしぞら）の下（した）

　ミーナはまたあきらめてとぼとぼと歩（ある）きはじめました。ミーナはいくところがありません。しばらく歩（ある）くと、なつかしい感（かん）じがする大（おお）きな粉引（こなひ）き風車（ふうしゃ）のたてものが見（み）えてきました。ダニエルが小（ちい）さいときは、いっしょによくこの風車（ふうしゃ）まで遊（あそ）びにきました。今（いま）はもう粉（こな）ひきには使（つか）っていないようです。風車（ふうしゃ）もさびてしまったのか、動（うご）いていません。中（なか）へ入（はい）ってもだれもいませんでした。ミーナは上（うえ）のほうへ上（あ）がっていきました。すき間（ま）から顔（かお）を出（だ）して見（み）ると、天（あま）の川（がわ）がかがやいていました。美（うつく）しいまんてんの星空（ほしぞら）の中（なか）、ミーナはひとりぼっちでした。
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１０　風車（ふうしゃ）の家（いえ）

　ミーナはそれから粉引（こなひ）き風車（ふうしゃ）を自分（じぶん）の家（いえ）として、その中（なか）でくらしました。そして、まちへ出（で）て食（た）べ物（もの）をさがしました。しかし、食（た）べ物（もの）は十分（じゅうぶん）ではありませんでした。ミーナはだんだんやせてきました。でも、ダニエルのいない家（いえ）にもどることはできませんでした。窓（まど）に明（あ）かりのついた家（いえ）にも行（い）くことができませんでした。食（た）べ物（もの）をとるには山（やま）へ行（い）ったほうがいいのですが、そうするとダニエルの家（いえ）からはとおくはなれてしまいます。ミーナは粉（こな）ひき風車（ふうしゃ）の家（いえ）の中（なか）で、ダニエルの帰（かえ）ってくるのをまつことにしました。いつかきっと帰（かえ）ってくるとしんじていました。
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１１　さむい星空（ほしぞら）
　風（かぜ）が冷（つめ）たくなってきました。粉引（こなひ）き風車（ふうしゃ）の家（いえ）はすき間（ま）から冷（つめ）たい風（かぜ）がふきこんできます。さむい夜空（よぞら）に星（ほし）がまたたきます。ミーナはおなかがすきました。ミャーミャーとないてみましたが、あたりにはだれもいません。
「さびしいなあ…。」 ミーナはかなしくなってきました。
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〈ミーナ下につづく↓〉



ミーナのクリスマス
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　ミーナのクリスマス　下
木村達也（きむらたつや）
１２　よわっていく

　冬（ふゆ）になると食（た）べ物（もの）がすくなくなってきます。なにも食（た）べることができない日（ひ）が続（つづ）きました。体（からだ）がよわってきて、元気（げんき）もなくなってきました。もうダニエルが帰（かえ）ってくる日（ひ）までは、もたないかもしれないと思（おも）いました。粉（こな）ひき風車（ふうしゃ）の家（いえ）で、なにも食（た）べずにねていることが多（おお）くなりました。
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１３　ちかづくクリスマス

　クリスマスの日（ひ）がちかくなってきました。まちには赤（あか）や緑（みどり）のかざりがつけられ、にぎやかになってきました。まちでは、家（か）族（ぞく）みんながしあわせそうに、クリスマスのじゅんびをしているようでした。まちの教会（きょうかい）からは、讃美歌（さんびか）がきこえてきます。教会（きょうかい）の中（なか）から、こどもたちが出（で）てきました。
「いい子（こ）にしていたら、サンタクロースがきてプレゼントをくれるよ。」
「なにがほしい？」
「いってはだめなんだよ。」
「じゃあ、神様（かみさま）におねがいしてみようか。」 こどもたちが道（みち）でおいのりをしました。ミーナはダニエルに会（あ）わせてくださいとおいのりしました。もう、体（からだ）がよわって歩（ある）くのもふらふらでした。
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１４　クリスマスの日（ひ）

　クリスマスの日（ひ）が来（き）ました。まちはおおさわぎです。まちには、さらにうれしいニュースが流（なが）れました。領主（りょうしゅ）様（さま）の遠征隊（えんせいたい）が帰（かえ）ってきたのです。ママは遠征隊（えんせいたい）の行進（こうしん）の列（れつ）の中（なか）にダニエルのすがたを見（み）つけました。ママはダニエルが無事（ぶじ）に帰（かえ）ってくるかどうか、心配（しんぱい）でした。久（ひさ）しぶりにダニエルが木組（きぐ）みの家（いえ）にもどってきました。窓（まど）には花（はな）がかざられ、明（あ）かりがつきました。クリスマスのごちそうが夕食（ゆうしょく）にならびました。
「ママはダニエルのことがとても心配（しんぱい）だったのよ。無事（ぶじ）でよかったわ。」
「僕（ぼく）は、大丈夫（だいじょうぶ）さ、ママ。ところでミーナは？」
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１４B　いない

「あのネコは夕食（ゆうしょく）の魚（さかな）を食（た）べてしまうし、やくにたたなくなったので、すててしまったわ。」
「ママ、なんてことをするんだ。僕（ぼく）はミーナのことがとても好（す）きなんだよ。」 ダニエルはおどろいて、そういいました。
「僕（ぼく）、ミーナをさがしてくるよ。」 そういうとダニエルは外（そと）に飛（と）び出（だ）しました。
「ミーナ、ミーナ。」 ダニエルは声（こえ）の続（つづ）くかぎり、ミーナの名前（なまえ）を呼（よ）んで、家（いえ）のまわりをさがしました。しかし、ミーナはすがたをあらわしません。自分（じぶん）の声（こえ）がきこえれば、すぐにとんでくるはずなのにと心配（しんぱい）になりました。
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１５　風車（ふうしゃ）の家（いえ）

　ミーナは粉引（こなひ）き風車（ふうしゃ）の家（いえ）にいました。もう、体（からだ）がよわって動（うご）けなくなっていました。ミーナは目（め）をとじました。そして、夢（ゆめ）を見（み）ました。ご主人（しゅじん）のダニエルがむかえにくる夢（ゆめ）です。そして、大（おお）きな家（いえ）の明（あか）るい窓（まど）の中（なか）で、ごちそうを食（た）べました。暖炉（だんろ）には火（ひ）がもえていて、部屋（へや）の中（なか）はあたたかでした。夢（ゆめ）の中（なか）でしたが、ミーナはダニエルに会（あ）うことができました。今日（きょう）はクリスマスだから、ねがいごとを神様（かみさま）が少（すこ）しかなえてくださったのかもしれないと思（おも）いました。すき間（ま）から冬（ふゆ）の風（かぜ）が冷（つめ）たくふきこんできました。教会（きょうかい）から、かすかに賛美歌（さんびか）が聞（き）こえてきます。そして、空（そら）から静（しず）かに雪（ゆき）がまいおりてきました。
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１６　声（こえ）

　ミーナはふと賛美歌（さんびか）にまじって、自分（じぶん）の名前（なまえ）を呼（よ）ぶ声（こえ）を聞（き）いたような気（き）がしました。それも大好（だいす）きなダニエルの声（こえ）です。ミーナは夢（ゆめ）のつづきだろうかと思（おも）いました。しかし、だんだんと強（つよ）くはっきりと聞（き）こえてきます。
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１７　ねがいごとは？

　粉（こな）ひき風車（ふうしゃ）の家（いえ）のとびらをあける大（おお）きな音（おと）がしました。そして、そこには雪（ゆき）だらけになったダニエルが立（た）っていました。
「ミーナ。」 と大（おお）きな声（こえ）がして、ダニエルがかけよってきました。どうやら、夢（ゆめ）ではなさそうです。ミーナはダニエルの腕（うで）にしっかりとだきかかえられました。
「小（ちい）さいとき、この粉（こな）ひき風車（ふうしゃ）の家（いえ）でいっしょに遊（あそ）んだから、　きっとここだと思（おも）ったよ。さあ、家（いえ）に帰（かえ）ろう。」 ミーナはそういわれて、まるで夢（ゆめ）のようだと思（おも）いました。クリスマスの日（ひ）に神様（かみさま）が、本当（ほんとう）にねがいごとをかなえてくださったのだと思（おも）いました。　〈了〉　
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