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冬の詩




雪だるま
    木村達也

温かい息を
吹きかけられると
ぼくは溶けてしまうよ


大好きな人に
冷たくされると
ぼくは生きていけないよ




雪にこぼれる涙
    木村達也

雪が降っているね
雪の中から
ぼくの涙を
拾ってきてくれて
ありがとう

雪だるまが
ぼくの涙を
拾ってきてくれたよ

ぼくなんかのためにありがとう
だれにも相手にされないような
ぼくのためにありがとう

雪がきらきらかがやいて
降り続いている
涙もきらきらかがやいて
こぼれているよ

こんなぼくの涙を
拾ってくれてありがとう



凍る日  
   木村達也

機会を捉えて何かを聞けば
答えてはくれるけど
返事はなんとなくうわの空で
顔がこっちを向いていない
僕が話しかけているのに
他の人に話かけようとする
他の人に話すときは笑顔なのに
他の人が誘うときは笑顔なのに
いくら呼んでも声が届かない
心の中で泣いていても叫んでいても
振り向いてくれない冷たい横顔
そして口もきかなくなった
僕も口がきけなくなった
凍る日に立ち尽くす雪だるま






雪がふってきたね
      木村達也

雪が降ってきたね
ちょっと寒くなってきたよ

そうだね
ちょっと寒くなってきたね

風がふいてきたね
ちょっと今夜は冷えるよ

そうだね
ちょっと今夜は冷えるね

暗い夜も
凍える日も
ずっといっしょだよ

そうだね
ずっとずっと
いっしょだね








降り続く雪
   木村達也

こんなにも傷ついて
こんなにも悲しくて
それでも生きている
耐え続けている

こんなにも冷たくて
こんなにも寒くて
凍えるような雪が
降り続いている

やさしい思い出が
ぼくをこんなにも
苦しめる

せつなくてかなしくて
降り続ける雪の中
立ちつくしている




帰り道に
   木村達也

ゆっくりと
まいおりてきた
雪のかけら
つめたいね

白い田に
ぽつんとひとつ
赤いバケツを
かぶった雪だるま





雪の夜
   木村達也

ゆきだるまさん
こんばんは
今夜もいい感じで
降りますね

ねこさん
こんばんは
今夜もいい感じで
冷えていますよ





ねるねこ
   木村達也

雪の夜は静かだね
ねこねるごろり
ぐっすり眠る

雪の夜は静かだね
窓のガラスが
つめたい

ゆっくりふわふわ
雪はふってくる

部屋はぽかぽか
ねこねるごろり
ぐっすり眠る

ゆっくりふわふわ
ねるねこごろり
ぐっすり眠る



どこへ
   木村達也

雪が降ってきたね
雪はどこから
くるのかな

雪が降ってきたね
雪はどこへ
いくのかな

静かな夜だね
ぼくはどうして
ここに来たのかな

静かな夜だね
ぼくはどこへ
いけばよかったのかな







いちにち
   木村達也

朝、めざめたら寒かった
カーテンのすきまから
外を見ると
雪がすこしふっていた

昼、雪はどうなっただろう
カーテンのすきまから
外を見ると
雪はすこしつもっていた

夜、また寒くなってきた
カーテンのすきまから
外を見ると
雪は静かに舞いおりていた





本を読んで
    木村達也

本を読んで
いい夢を見てね
眠れるまで
ぼくがいっしょに
読んであげるよ

森や星や海のなかで
人や動物が仲良く暮らせる
そんなたのしい
いい夢を見られるといいね

本を読んで
いい夢を見てね
眠れるまで
ぼくがいっしょに
読んであげるよ






ひとりでさまよう
    木村達也

ひとりで
うすぐらい
森の中を
さまよっていた

森の中は
小さな川がながれて
きれいな紅葉が
散っていた

日が暮れてきて
家に帰れるか
心細くなった

おきざりにされた
こどもみたいに
心細くなった





街角で
    木村達也

寒い季節がやってきて
クリスマスが近づいてきたね
街に雪が降り始めて
ジングルベルの曲が流れる
ショーウィンドウに煌く
銀色の首飾りや
可愛い熊の縫いぐるみ
でも贈り物は買えない
買おうとすると涙があふれて
思い出すとせつなさがあふれる
優しさがあふれてくるけど
それを持っていく場所がなくて
街角の片隅で泣いている
雪が降るなかで泣いている




風邪
   木村達也

寒い季節が来て
空気が乾燥して
ごほんと咳が出て
風邪をひきました

熱っぽくて
汗が一杯出て
布団のなかで
日が暮れました

ひとりぼっちは
風邪のときに
こころぼそいね

ひとりぼっちは
夕暮れ時に
さびしいね







ありがとう
    木村達也

こんなぼくの歌を
聴いてくれてありがとう
とてもうれしいよ
こんな下手な歌だけど

こんなぼくの贈り物を
もらってくれてありがとう





冬の帰り道
   木村達也

雪がふっているけど
君にもらった
毛糸がもこもこ
オレンジ色のマフラー

風がつめたいね
でも、横で歩く君の
小さいけれど
あたたかい手







雪の公園
   木村達也

さようならと
手をふって
ふりしきる雪に
赤い傘をさして
歩く君の姿が
小さくなっていった

足をとめて
たちどまっている
白い雪にうまった
だれもいない
夕ぐれの公園





オリオンの下で
    木村達也
毛糸のぼうしに
もこもこのマフラー
ぶあついてぶくろの
君とぼく

夜おそくなって
さむくなってきたね

そうね
でも星がきれいよ
星はおいかけたり
おいかけられたりするのよ

ぼくがオリオン?
君は?

君はいたずらっぽく
笑った



さむいね
   木村達也

「さむいね」
そう言う君の手は
あたたかい

つめたい雪
赤い傘の下で歩く
冬の道






夢の雪
   木村達也

幼い日の記憶は
雪のように積もる

やさしく響く子守歌
甘く香る長い髪

雪はふりつづけ
いくつもの夜をこえた

ぼくはくり返し
夢を見続けた







 木村達也

ふりしきる
雪のなか
歩く人の
かげもない

ふりしきる
雪のなか
時はただ
ながれていく






わすれ雪
   木村達也

もうすぐ春なのに
雪がひらひら
ふってくる

よみがえる
雪の日にわかれた
あかい橋にたたずむ
あなたのおもかげ

雪はもうすぐ
消えるでしょう
あなたのおもかげ
もうすぐ
消えるでしょう






古都の雪
   木村達也

ゆっくりと
まいおりてくる
雪のかけら
つめたいね

となりにいる
君が開く赤い傘
あたたかいね
胸に小さな
灯がともる




古都の雪 U
   木村達也

ゆっくりと
まいおりてきた
雪のかけら
つめたいね

赤い傘の中で
君と飲むお茶
あたたかいね
心の中にしみわたる





やがておとずれるわかれに
   木村達也

心の中に
ふりつもった思い出
きらきらと光る
あなたの笑顔と
はにかむしぐさ
春がきたら
あなたとの思い出もとけて
きえてしまうのでしょうか





ぽつん
  木村達也

くらやみのなかに
ぽつんと立っていたよ
小さな雪だるま

くらやみのなかに
ぽつんと光っていたよ
小さな星




白い季節
    木村達也

雪が降り始めると
かがやいた君の笑顔
マフラーの上から
白い息がもれていた

雪の季節がきたって
はしゃいでいたね
白いニット帽から
長い髪があふれていた

大好きだったよ
君のこと
雪の上でおどったね

大好きだったよ
君のこと
雪の上で笑ったね




雪の屋根
   木村達也

はやく帰ろう
君が待っているから
続く雪の道に
はずむ白い息

はやく帰ろう
君が待っているから
オレンジ色の窓に
こぼれる笑い声

はやく帰ろう
君が待っているから
オリオンの下に
輝く雪の屋根



初雪
    木村達也

この冬
はじめての雪が
ふわふわと
まいおりてきた

雪は
思い出のように
すこしずつ
ふりつもっていった

いつの日からか
心のなかに
雪はつもりはじめた

雪の舞う日の
あの人のやさしいほほえみは
だれにむけられているのか

いくつかの夜の
夢のなかに
雪の舞う日があった

きらきらと舞う
ほほえみを映した
ちいさなかけらが
心のなかに
すこしずつ
ふりつもっていった




冬の夜
   木村達也

さむかったね
静かな夜に
君の寝息が
きこえてきた

少し温かかった
君の小さな手
白くふわふわと
雪がふっていたね




君を待つ人
   木村達也

冷たい夜の雪国に
ぽつんぽつんと見える
オレンジ色の窓明かり

こんなに夜おそくまで
だれかを待っているのかな

きっと
あいたいねって
待ち続けているんだよ
君のこと

屋根の上には
白い雪が
いつまでも
いつまでも
降り続いていたよ