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桜舞い落ちる湖から
野を旅する
雨だから
いつも見る夢
風と旅人の歌
もどる 野を旅する

さくらまいおりるみずうみから
きむらたつや
がけのしたにみずうみがある
しずかなこめんはなみもたたずに
かがみのようにないでいた
がけのうえにさくらのきがある
うすべにいろのはなびらはかぜもふかないのに
はらはらとみずうみにまいおりていた
たびびとはちいさなゆめをみずうみになげた
みずうみにちいさなはもんがひろがっていった
たびびとよ
ひとりでどこに
あるきだそうというのか
ここからさきは
どこへいってもさびしいだけ
なにをみてもかなしいだけなのに
Sakura mai oriru mizu'umi kara
Kimura Tatuya
Gake no sita ni mizu'umi ga aru
Sizukana komen wa nami mo tatazu ni
kagami no yôni naide ita
Gake no ue ni sakura no ki ga aru
Usubeni iro no hanabira wa kaze mo hukanai no ni
harahara to mizu'umi ni mai orite ita
Tabibi to wa ti'isana yume o mizu'umi ni nageta
Mizu'umi ni ti'isana hamon ga hirogatte itta
Tabibito yo
hitori de doko ni
aruki dasô to iu no ka
Koko kara saki wa
doko e itte mo sabisi'i dake
nani o mite mo kanasi'i dake nanoni








暗い森の中で![]() 1 |
滝を見る![]() 2 |
暗い谷を遡る![]() 3 |
天上から降り注ぐ![]() 4 |
天から降りる水![]() 5 |
天から落ちてくる水![]() 6 |
川を下る魂![]() 7 |
水![]() 8 |
振り返るとき![]() 9 |
なくなった橋![]() 10 |
泣いている水車![]() 11 |
またここに![]() 12 |
![]() だれも だれも さまよう どこにいっていいのか わからない さまよう ぐるぐるとまわるだけ 暗い森の中で 木村達也 秋の森の中に 流れる冷たい水 だれも知らない 暗い谷の中 湿った土に 降り積もった葉 だれも知らない 暗い谷の中で さまよう魂は どこにいっていいのか わからない さまよう魂は 暗い森の中で ぐるぐるとまわるだけ |
![]() くらいもりのなかで きむらたつや あきのもりのなかに ながれるつめたいみず だれもしらない くらいたにのなか しめったつちに ふりつもったは だれもしらない くらいたにのなかで さまようたましいは どこにいっていいのか わからない さまようたましいは くらいもりのなかで ぐるぐるとまわるだけ Kurai mori no naka de Kimura Tatuya Aki no mori no naka ni nagareru tumetai mizu Dare mo siranai kurai tani no naka Simetta tuti ni huritumotta ha Daremo siranai kuraita ni no naka de Samayô tamasi'i wa doko ni ittei'i no ka wakaranai Samayô tamasi'i wa kurai mori no naka de guruguru to mawarudake |
![]() さまよう たどり 滝を見る 木村達也 さまよう暗い森の中で 流れる谷の水の音の 遥か向こうから 滝の流れ落ちる 音が聞こえる 川を遡り 音の先に たどり着けば 天から流れ落ちてくる 大量の水があった 見上げれば 青い空の彼方から 轟々と砕けながら 流れ落ちてくる 見上げれば 滝の上に 青い天の世界が 広がっている |
![]() たきをみる きむらたつや さまようくらいもりのなかで ながれるたにのみずのおとの はるかむこうから たきのながれおちる おとがきこえる かわをさかのぼり おとのさきに たどりつけば てんからながれおちてくる たいりょうのみずがあった みあげれば あおいそらのかなたから ごうごうとくだけながら ながれおちてくる みあげれば たきのうえに あおいてんのせかいが ひろがっている Taki o miru Kimura Tatuya Samayô kurai mori no naka de nagareru tani no mizu no oto no haruka mukô kara taki no na ga reotiru oto ga kikoeru Kawa o sakanobori oto no saki ni tadoritukeba tenkara nagare otite kuru tairyô no mizu ga atta Miagereba aoisora no kanata kara gôgô to kudakenagara nagare otite kuru Miagereba taki no ue ni aoi ten no sekai ga hirogatte iru |
![]() あの たくさんいるだろうけど この あるいはカモシカも ぼくの この たなびく そして、 暗い谷を遡る 木村達也 月のある夜 あの月を見ている人は たくさんいるだろうけど この山奥に分け入って 流れる滝の音を 聞いているのはぼく一人 あるいはカモシカも聞いているか ぼくの魂は この暗い谷を遡り 流れ落ちる滝を越え 山の上へと登っていき たなびく雲になる そして、見晴らしのよい 高い所から下を眺めたり 見晴らしのよい 高いところをいったりきたりする |
![]() くらいたにをさかのぼる きむらたつや つきのあるよる あのつきをみているひとは たくさんいるだろうけど このやまおくにわけいって ながれるたきのおとを きいているのはぼくひとり あるいはカモシカもきいているか ぼくのたましいは このくらいたにをさかのぼり ながれおちるたきをこえ やまのうえへとのぼっていき たなびくくもになる そして、みはらしのよい たかいところからしたをながめたり みはらしのよい たかいところをいったりきたりする Kurai tani o sakanoboru Kimura Tatuya Tuki no aru yoru Ano tuki o mite iru hito wa takusan iru darô kedo Kono yamaoku ni wakeitte nagareru taki no oto o ki'iteiru no wa boku hitori Arui wa kamosika mo ki'ite iruka Boku no tamasi'i wa kono kurai tani o sakanobori nagare otiru taki o koe yama no ue e to nobotte iki tanabiku kumo ni naru Sosite miharasi no yoi takai tokoro kara sita o nagametari Miharasi no yoi takai tokoro o ittari kitari suru |
![]() きたりする そして やがて また 天上から降り注ぐ 木村達也 雲となった魂は 天上をいったり きたりする そして 天上で 集まり始める やがて魂は 雨となって 山の頂に 降り注ぐ 山の頂から 雲となった魂 また雨となって 山の頂に 降り注いで 帰ってくる |
![]() てんじょうからふりそそぐ きむらたつや くもとなったたましいは てんじょうをいったり きたりする そして てんじょうで あつまりはじめる やがてたましいは あめとなって やまのいただきに ふりそそぐ やまのいただきから くもとなったたましい またあめとなって やまのいただきに ふりそそいで かえってくる Tenzyô kara hurisosogu Kimura Tatuya Kumo to natta tamasi'i wa tenzyô o ittari kitari suru Sosite tenzyô de atumari hazimeru Yagate tamasi'i wa ame to natte yama no itadaki ni hurisosogu Yama no itadaki kara kumo to natta tamasi'i Mata ame to natte yama no itadaki ni hurisosoide kaettekuru |
![]() また 天から降りる水 木村達也 天から雨となって 山に降り注いだ水は 沢を下って集まってくる 龍のごとく走る 巨大な水の流れは 黒い岩石の落差を 轟音とともにふりそそぐ 激しくたたきつける力に 水しぶきが砕け散る 魂はそこで砕けて また新しくくみ変わるのだ |
![]() てんからおりるみず きむらたつや てんからあめとなって やまにふりそそいだみずは さわをくだってあつまってくる りゅうのごとくはしる きょだいなみずのながれは くろいがんせきのらくさを ごうおんとともにふりそそぐ はげしくたたきつけるちからに みずしぶきがくだけちる たましいはそこでくだけて またあたらしくくみかわるのだ Ten kara oriru mizu Kimura Tatuya Ten kara ame to natte yama ni hurisosoida mizu wa sawa o kudatte atumatte kuru Ryû no gotoku hasiru kyodaina mizu no nagare wa kuroi ganseki no rakusa o gôon to tomo ni hurisosogu Hagesiku tatakitukeru tikara ni mizu sibuki ga kudake tiru Tamasi'i wa soko de kudakete mata atarasiku kumikawaru no da |
![]() 天から落ちてくる水 木村達也 天から 瀑音を響かせて 水が落ちてくる 清らかな水は 疲れた魂に 力を与える 水は細かい 飛沫となって 降り注ぐ 冷たい水は 焼けた魂の熱を 冷ましていく 清浄の地で 魂は静かに 美しさを 取り戻していく |
![]() てんからおちてくるみず きむらたつや てんから ごうおんをひびかせて みずがおちてくる きよらかなみずは つかれたたましいに ちからをあたえる みずはこまかい しぶきとなってふりそそぐ つめたいみずは やけたたましいのねつを さましていく せいじょうのちで たましいはしずかに うつくしさを とりもどしていく Ten kara otite kuru mizu Kimura Tatuya Ten kara gôon o hibikasete mizu ga otite kuru Kiyoraka namizu wa tukareta tamasi'i ni tikara o ataeru Mizu wa komakai sibuki to natte hurisosogu Tumetai mizu wa yaketa tamasi'i no netu o samasite iku Seizyô no ti de tamasi'i wa sizuka ni utukusisa o torimodosite iku |
![]() やがて また 川を下る魂 木村達也 魂は山の頂から 川となって流れ始める やがて滝となって 降り注ぐ 魂は川をくだって 海に流れる 魂は海から また空に昇り 雲になる 雲は雨を降らし 魂はふたたび山の頂に 降りそそぐ |
![]() かわをくだるたましい きむらたつや たましいはやまのいただきから かわとなってながれはじめる やがてたきとなって ふりそそぐ たましいはかわをくだって うみにながれる たましいはうみから またそらにのぼり くもになる くもはあめをふらし たましいはふたたびやまのいただきに ふりそそぐ Kawa o kudaru tamasi'i Kimura Tatuya Tamasi'i wa yama no itadaki kara kawa to natte nagare hazimeru Yagate taki to natte hurisosogu Tamasi'i wa kawa o kudatte umi ni nagareru Tamasi'i wa umikara mata sora ni nobori kumo ni naru Kumo wa ame o hurasi tamasi'i wa hutatabi yama no itadaki ni hurisosogu |
![]() ぼくの その ぼくの だからぼくは いつかは だからぼくは いつかは 水 木村達也 谷には冷たい水が 音を立てて流れている ぼくの体はほとんどが その水でできている 冷たい水を集めて ぼくの体はできている だからぼくは いつかは水にもどる だからぼくは いつかは水の流れになる |
![]() みず きむらたつや たににはつめたいみずが おとをたててながれている ぼくのからだはほとんどが そのみずでできている つめたいみずをあつめて ぼくのからだはできている だからぼくは いつかはみずにもどる だからぼくは いつかはみずのながれになる Mizu Kimura Tatuya Tani ni wa tumetai mizu ga oto o tatete nagarete iru Boku no karada wa hotondo ga sono mizu de dekite iru Tumetai mizu o atumete boku no karada wa dekite iru Dakara boku wa ituka wa mizu ni modoru Dakara boku wa ituka wa mizu no nagare ni naru |
![]() ふと なぜ ただ 振り返るとき 木村達也 沢を登ってきて ふと後ろを振り返る 紅葉の木々と 優しい水の流れ なぜ振り返ったのだろう 別になにもないのに ただ少し風が吹いて 水が流れているだけなのに |
![]() ふりかえるとき きむらたつや さわをのぼってきて ふとうしろをふりかえる もみじのきぎと やさしいみずのながれ なぜふりかえったのだろう べつになにもないのに ただすこしかぜがふいて みずがながれているだけなのに Hurikaeru toki Kimura Tatuya Sawa o no botte kite huto usiro o hurikaeru Momizi no kigi to yasasi'i mizu no nagare Naze hurikaetta no darô Betu ni nani mo nai no ni Tada sukosi kaze ga huite mizu ga nagarete iru dake nanoni |
![]() なくなった だれかが なくなった橋 木村達也 橋が大水に流されて 途中からなくなっていた 橋桁だけが残っている 昔はここに橋があって だれかが歩いていたことだろう 昔はここに橋があって 橋の上から魚を見たことだろう |
![]() なくなったはし きむらたつや はしがおおみずにながされて とちゅうからなくなっていた はしげただけがのこっている むかしはここにはしがあって だれかがあるいていたことだろう むかしはここにはしがあって はしのうえからさかなをみたことだろう Nakunatta hasi Kimura Tatuya Hasi ga ômizu ni nagasarete totyû kara nakunatte ita Hasigeta dake ga nokotte iru Mukasi wa koko ni hasi ga atte dareka ga aruite ita koto darô mukasi wa koko ni hasi ga atte hasi no ue kara sakana o mita koto darô |
![]() くるくるとまわっている ボクは ゆらゆらゆれる 泣いている水車 木村達也 遠くを見れば 変に悲しげな水車が 涙をこぼしながら くるくるとまわっている 魚になった ボクは上を見上げて ゆらゆらゆれる 景色を見ている 水の底に沈んで 涙にゆれる 景色を見ている |
![]() ないているすいしゃ きむらたつや とおくをみれば へんにかなしげなすいしゃが なみだをこぼしながら くるくるとまわっている さかなになった ボクはうえをみあげて ゆらゆらゆれる けしきをみている みずのそこにしずんで なみだにゆれる けしきをみている Naite iru suisya Kimura Tatuya Tôku o mireba hen ni kanasigena suisya ga namida o kobosinagara kurukuru to mawatte iru Sakana ni natta boku wa ue o miagete yurayurayureru kesiki o miteiru Mizu no soko ni sizun de namida ni yureru kesiki o miteiru |
![]() またここに ぼくの くらい さかのぼって またここに つめたいしぶきを あびるかもしれない いつかこのすずしい のぼるかもしれない またここに 木村達也 ぼくの魂はきっと 天にのぼろうとして 高い所をさがす くらい谷を さかのぼって 滝をかけあがる またここに来て つめたいしぶきを あびるかもしれない いつかこのすずしい 階段のような滝を のぼるかもしれない |
![]() またここに きむらたつや ぼくのたましいはきっと てんにのぼろうとして たかいところをさがす くらいたにを さかのぼって たきをかけあがる またここにきて つめたいしぶきを あびるかもしれない いつかこのすずしい かいだんのようなたきを のぼるかもしれない Mata koko ni Kimura Tatuya Boku no tamasi'i wa kitto ten ni noborô to site takai tokoro o sagasu Kurai tani o sakanobotte taki o kakeagaru Mata koko ni kite tumetai sibuki o abiruka mo sirenai Ituka kono suzusi'i kaidan no yôna taki o noboru kamo sirenai Â Î Û Ê Ô â î û ê ô |